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修理費用の賠償について~交通事故による物的損害①

こんにちは弁護士の田代です。 今回の動画から交通事故に遭われてお困りの方、特に事故の経験などない初めて交通事故に遭われてどうしたらいいかわからない、そういった方のために交通事故の損害賠償の基本的な知識についてシリーズで解説します。今回は修理費用の賠償についてお話しします。

こんにちは弁護士の田代です。 今回の動画から交通事故に遭われてお困りの方、特に事故の経験などない初めて交通事故に遭われてどうしたらいいかわからない、そういった方のために交通事故の損害賠償の基本的な知識についてシリーズで解説します。今回は修理費用の賠償についてお話しします。

修理費用の賠償ルール

1.事故を原因とする費用

順番に見ていきますと、事故を原因とする費用でなければいけません。これはシンプルで当たり前の話かと思いますが、なかなか自分の車の傷の状況を正確に把握してる人はおりません。そのためここの傷は事故によるのかどうか、被害者にとっては当たり前に事故によると思っていた傷が、相手の保険会社側から見るとそうじゃないんじゃないか、そういった問題が出てくるケースはございます。

 

例えば車のホイールに傷がついたというような時、そのホイールの傷もこの事故の傷かどうかという時には、車をちょっとずつ動かしてみて周りのフェンダーとかバンパーとかその周りの部分との傷と高さが一致しているかどうかとか、あるいは相手の車の傷の高さと一致するかどうかとか、こういったところで確認がされます。

 

2.最低限の費用

次のルールとして”最低限の費用”という、これはちょっと不本意なルールですけれども、賠償実務上はそのように裁判所も含めて考えております。つまり事故の前の状態に戻すために最低限の費用ということで、例えば板金で直る、交換しないでも車を元に一応戻すことができるという時には、その部品の交換費用は認められません。また問題になりやすいのが塗装費用ですね。傷がついたところについて塗装を元に戻してこれで特に目立たなくなりましたというところで終わってしまって、ちょっと塗装ムラが出てしまうので他の所も周りも綺麗に塗り直す必要があるんじゃないかと、車を大切にされてる方はそこまでこだわりますけれども、その分の費用は残念ながら賠償の費用としては認められません。

イメージとしては、そこまで大切にしてないものについて、一応元の状態として使えるといったイメージになります。

 

そして事故を原因とするかどうかとか、最低限の費用かどうか、これはなかなか被害者本人がどうこう相手と協議するものではなくて、基本的にはその道のプロである修理工場ですね、被害者の車を修理に出すという時に、そこの工場の方と相手の保険会社、その損害を見るアジャスターという資格があるんですけれどもそういう損害を確認する資格を持ってる保険会社の担当者が、その工場と相手の保険会社とこの2者で協議をして、事故を原因とするかどうか、最低限の内容として認められるかどうか、ということをすり合わせていきます。

 

その協議が整った時には、「協定できました。損害の金額が決まりました。」ということですね。なのでこの協定ができるというのは大事なことでして、これが出来れば少なくとも修理工場の方もその金額で直してもらえるという話になりますので、この協定を待たずにどんどん話を進めていくというのは少しリスクがあるんじゃないかなと思います。被害者の立場としては修理工場の方に時々問い合わせて、「協定できましたか?」と聞いてみたりとか、あるいは自分の保険会社の担当者の方に聞いてみるとか、そういった形で確認を取られるといいんじゃないかなと思います。

 

3.時価額を超えない費用

賠償ルールとしてもう一つ加えないといけないのが、時価額を超えない費用という賠償ルールもございます。これは壊れてる車がありまして、修理費の方が高いのか低いのか、時価額の方が高いのか低いのか、時価額というのは中古価格ですね。これがどっちが高いのかというのが天秤にかけられます。そして賠償として認められるのはその安い方ということで、つまり修理費用に着目しますと、時価額を超えちゃった分は相手からは取ることはできない、賠償として認められない。ここはご注意ください。

 

(1)時価額の決め方

 

 そして時価額ってどうやって決めるのかといいますと、基本的な考え方がございまして、一つはレッドブックという本がございます。有限会社オートガイドという会社が発行しておりますレッドブックという本がございます。

http://www.red-book.jp/

 

この本には何年式のこの車のこの型式について、中古価格としていくらなのかとかそういったことが毎回細かく羅列されておりますので、基本的にはその価格でまずは考えられまして、あと時価額、年式とかは載っている通りになりますが、走行距離これはまちまちですので走行距離によってそこに出てる金額の修正がされる。たくさん走ってるとその分時価額としては低くなりやすいということですね。

 

時々業務用の車とか非常に古い車とかで、このレッドブックに載ってないということが極々稀にございます。その時は減価償却というルールで考えられたりすることが多いのかなと、特にこれは相手の保険会社からは減価償却するとこうなります。つまり購入した時にはこの金額で、1年後はこれ、1年後はこれということで算定される。

これだと、特に古い車などがレッドブックに載ってないとなると、時価額としては物凄く低い金額が提案されることが多いです。こういった時に被害者側でどうするのかといいますと、実際の取引価格はいやいやこんな理論値じゃなくて、実際にはこれぐらいの金額で取引されていますよと、そういったことの資料を出せれば、例えば減価償却されてる金額よりも高い賠償を請求できたりとか、あるいはこのレッドブックから算定する金額よりも高い金額で請求できることもございます。なのでこの実取引価格を調べてみるのも一つじゃないかなと思います。調べ方は簡単でして、車に乗られてる方はよく利用されると思いますが、中古車なんかのグーネットとかカーセンサーとか、今はインターネットで実取引価格っていうのはすぐ確認できますので、そういったものを資料として出すという被害者側としてのやりようがありますので是非ご確認ください。

 

(2)時価額の例外

 

 ただいずれにしても時価額が決まっていて、それよりも修理費が超えてしまう時には、その時価額までしか賠償してもらえないと、そういう困った状況がございます。例えば修理費が200万円かかる、時価額は50万円です、となると50万円しか賠償してもらえないと。そういう頭打ちになる。これについて一応例外がございます。

一つが自分の車両保険を使うとき、この時には時価額を超えた分についても賠償されるというケースが非常に多くございます。これは保険の内容にもよってきますけれども、是非ご確認ください。

 

ただ自分の車両保険を使うと保険料は上がったりだとかそういうリスクもありますし、なかなか使いたくないですよね。まずは相手から賠償してもらいたいという時にこれが大事な視点ですが、相手の車の自動車保険、これに特約が付いてないか。「対物超過賠償特約」とか「対物超過費用特約」とか、そういった対物とか超過とかそういう言葉が使われてることが多くございますが、つまり、事故の相手の保険の内容に時価額を超えた分も賠償しますという特約がついてることがあるんですよ。これが付いていて相手が使うと言ってくれればその分について時価額を超えた修理費も賠償してもらえる見込みがございます。これは、聞かないと相手の方の保険会社も使いますと検討してもらえませんので、ぜひ一度聞いてみると良いかと思います。

 

このように今回の動画では、交通事故による物の損害についての一番基本である修理費用の賠償について解説いたしました。ただ一口に修理費用の賠償と言いましても、知ってると知らないとでスムーズに交渉はできるかどうかという違いもある、知識もいっぱいございますので、是非この辺りは勉強されてください。あるいは端的に弁護士に依頼されるとかご相談いただくと良いかと思います。

では失礼します。

 

著者紹介

弁護士 田代 隼一郎 

おくだ総合法律事務所 所属 

平成24年 弁護士登録  福岡県弁護士会所属 

九州大学法学部卒  大阪大学大学院高等司法研究科修了 

 弁護士 田代 隼一郎のプロフィール詳細