· 

その他の物的損害~交通事故による物的損害③

こんにちは弁護士の田代です。今回の動画では交通事故による物的損害について、これまでシリーズで解説してきました第3回についてご説明致します。

「その他の物的損害について」というタイトルで、よければこれまでの第1回・第2回をご覧になっていない方はそちらから見ていただいた方が分かりやすいんじゃないかなと思います。

第1回・第2回の内容も少しおさらいしますと、この動画のシリーズでは交通事故による物的損害、物的損害というのは物の損害ですね。それについて、主に事故などにあまり詳しくなくて、事故にあったけどどうしたらいいかわからない。あるいは身近な人がそういった目にあってる。そういった中でインターネットなどで調べられてる、そういった方に対して主にご説明しております。

 

交通事故の場合、主に物の損害、一番わかりやすいのは乗っていた車などですね。そういった物の損害。あるいは怪我をしたという人の損害。これは人的損害と言います。主にこの二つに損害を分けることができまして、今回のこのシリーズでは物の損害に注目して解説しております。

 

そして物の損害にどんなものがあるかと言いますと、わかりやすいのが事故にあって車が壊れた。その車の修理費用ですね。一番よく目にする物の損害です。これは第1回の動画で解説しておりますのでよかったらそちらもご覧ください。

 

他に物の損害としてあるものは、レッカー費用。車が壊れて動かなくなった。そういった時にレッカー車で工場とか自宅とかそういったところに運んでもらう費用ですね。これもよくある物の損害です。

さらに代車費用。レッカーで車を工場に運んで、修理をしてもらうことになりました。ただ修理の間も車がないと困りますといった時に、工場からあるいはレンタカー会社から車を借りる。これが代車と言いますけれども、その費用ですね。これも比較的よく目にする物の損害です。この2番目のレッカー費用、3番目の代車費用、これについてはシリーズ第2回の動画で解説しておりますのでよかったらそちらをご覧下さい。

 

そして今回の動画ではその他の費用です。今回は結構広く浅くという解説になります。今回も事故に詳しくない方向けに意識してますのでよかったら最後までお付き合いください。

 

1 慰謝料

さて、その他の物的損害、どういったものがありますかということで、よく依頼者から相談されるのが「慰謝料」ですね。特に大切にしていた車です、あるいは買ったばかりの車なんです、、それがこんな事故にあって壊れてしまって今非常に気持ちとして落ち込んで、場合によってはそれで実際病院に行かれたりとか、あるいは数日間体調が悪い中で過ごされると、これの慰謝料は請求できないんでしょうかと、こういった相談をよく 受けることになりますが、残念ながら慰謝料、これはですね、物的損害に関しての慰謝料は日本の法制度では基本的に認められていません。そのため、車が壊れたということ、あるいは物が壊れた、それ以外のもの、あるいは物を盗まれたとかこうしたことでの慰謝料というのは基本的には法律上は請求できない。相手に保険会社がいる時などはなかなか難しいんじゃないかなというふうに思います。

 

例外として、飼っていたペットなどが一緒に乗っていて、そのペットが亡くなってしまったとか、そういったことについては多少例外はありますが、ただ今違和感がある方がいらっしゃると思いますが、ペットも「物」なんですよね。物的損害扱いという非常にドライな制度ですので、大切にされていたペットが亡くなったといった時の慰謝料としても、非常に金額的には厳しいものがあるんじゃないかなという、そういった日本の法制度でございますので、そこはご理解ください。

あと別に、怪我をされた方ですね、これについては慰謝料は比較的に認められると、そういった制度になっております。

 

2 評価損

大切な車が壊れた、慰謝料は請求できないとなった時に、類似の制度かもしれませんが、実は「評価損」という損害は請求できる場合があります。評価損、車の評価ですね。車の価値が事故によって減った。当然修理をするということは前提になりますけれども、修理をしても事故の前と完全には評価としては一緒にならないんじゃないかとそういう問題ですね。

 

この評価損にどういったものがあるかと言いますと、大きく技術上の評価損、取引上の評価損というふうに分けられます。

 

(1)技術上の評価損

1番の、技術上の評価損。これは修理をしても残念ながら完全には元に戻らず、機能あるいは外観が完全に修復できないと、それによっての車の交換価値が低下する。例えば怪我で言うと、後遺症に近い感じですよね。怪我をされた方が治療をして、ちょっとずつ、ずっと良くなっていっても、どこかで痛みが残ったままで、治療しても頭打ちになる。こういったものを後遺症と言いますけれども、それを怪我をされた方を車というふうに考えてみたらわかりやすいかと思います。修理をしても完全に修復できなかった時、その時には評価損という技術上の評価損を請求できることがございます。ただ、今の日本では修理の技術って非常に上がっているんですよね。日本・世界でそうですけれども。なので技術上の評価損が出ることはほとんどございません。大きな事故で車が大破した場合などは考えられますけれども、ただそういった時には車の買い換え費用の方になるんじゃないかと、そういったことによくなりますので、この修理費用・買い換え費用の話はシリーズ第1回で解説しておりますのでわかるかと思いますが、もう買い換えた損害しか認められない、とそういうことになることが多いんじゃないかなと。

 

(2)取引上の評価損

技術上の評価損はあまり問題になりませんが、他方、取引上の評価損、こちらの方は比較的目にします。これは、事故自体による交換価値の低下、つまり車が事故で破損して、修理をして一応元に戻りましたという話になるんですが、ただ、事故歴が残るということですよね。例えば皆さんが買手として考えた時に、中古車を購入する時に事故歴はありませんかと聞かれることがよくあると思いますが、やっぱり気にされるんですよね。それでそのことによって交換価値、車の価値が落ちるという、これが取引上の評価損になります。

 

ただ、この取引上の評価損もなかなか認められるケースは限られておりまして、まず通常の国産の自動車、普通の車の場合、 新車で購入して登録してから3年以内、走行距離でいうと4万km 以下ですね。そういった比較的新しい、あるいは走り込んでないそういった車の場合にのみ、基本的には取引上の評価損が認められます。あるいは通常の国産車じゃなくて外国車いわゆる外車・人気車。国産でも高級車と言われてるものですよね。そういったものについてはもう少しこの評価損の幅が広がりまして、新車で購入して登録してから5年以内あるいは走行距離にすると6万km以下、外車や高級車・人気車こういったケースの場合に、こういった基準が評価損が認められるかどうかという目安になります。

 

この認められるケースがまず絞られまして、さらに評価損ですね、いくら認められるのかというのも非常に厳しい運用がございまして、比較的広まっている考え方では、修理費の1割から3割程度です。なので、100万円かかった修理をしました、と。結構な修理ですよ、結構な破損ですけれども、それでも10万円から30万円程度と、基本的にはその程度の金額になりまして。なのでやはり慰謝料が認められないのと同じく、評価損も厳しい。つまり物に対しての持ち主の気持ちに関しては日本の法制度は厳しい運用が取られてございます。

 

3 休車損害

慰謝料、評価損と見てきまして、次に時々目にするものとして「休車損害」ですね。休車損害、先ほど代車料の話をしてましたけれども、代車料とは違います。ちょっと似てますけれども違いまして、イメージとしては、休業損害あるいは営業損害に近いかなと思います。どういうことかと言いますと、例えば個人タクシーで運転してる人が事故でタクシーが壊れてしまって修理に出さないといけなくなりました。その間は営業ができなくなり休業になってしまう。こういったときの休業での損害ですね。

 

こういったものが休車損害のひとつの例でして、あるいはタクシー会社、個人じゃなくてグループでタクシーを何台か持っていて何人も従業員を雇ってるタクシー会社がありまして、そのタクシーの一台が事故で壊れて修理に出しました。その間休業はしてませんけれどもタクシーが減ったことで収入が減ってしまい、売り上げが減りました。こういった時は営業損害ということで、休車損害の一つという形で認められています。ただし、ここでも厳しいところがございまして、例えばタクシー会社のケースで言うと、他に遊休車、つまり他に営業に回せる車の余分なところはなかったのか、余裕がなかったのかと。こういった点で、かなり細かい営業資料で立証してそれで初めて認められるかどうかと。そういったケースですので、休車損害も非常に厳しい印象を持っております。なので、これまでの1・慰謝料は✕:基本的には認められない。2・評価損は△:認められることもあるけれども基準としてはなかなかハードルが高い。3・休車損害これも同じく△:ハードルが高い、とそういった形になります。 

 

4 着衣等の損害

あと、他の損害として、着衣などの損害ですね。例えば私がバイク事故に遭いました。私が例えば帰り道にバイクを運転していて事故にあった時に、服がボロボロに、バイクのときは袖などが破れてしまいます。こういったものは着衣の損害となりまして、あるいは車の事故でもスマートフォンが壊れてしまった、とかですよね。そういったものも車以外の物の損害ということで、4番目の一つの例になります。

 

こういった損害に関しては、請求することはままあるんですけれども、金額としては、新しく服を買い直す費用は認められないんですよね。事故当時のこの服の中古価値というふうに判断されますので、いついくらでこの服を買ったのか、ということの資料を出して、そこから減価償却という1年経つごとに何割減りますと、そういった考え方で服の価値というものが決められてしまいますので、着衣等の損害についても非常に厳しい運用となりますので△とさせていただきました。 

 

5 弁護士費用

最後にその他の物的損害としては、弁護士費用ですね。損害の賠償の請求のために弁護士に依頼しました、その費用を請求したい、というのもございます。これについては裁判をした場合で、判決まで行く時には弁護士費用も一部考慮されることはございます。ただ実際にかかった費用ではなく判決で認められた請求額、例えば100万円の賠償が認められました(内訳はさておき)と、そうなった時にはその概ね1割というふうに言われております。100万円だったら10万円ですね。実際には弁護士費用が20万円かかりましたとなっても全額は請求できません。

 

また、弁護士費用特約に入られてる場合には弁護士費用の負担はないんじゃないかという話で、後で自身の保険会社との協議が必要になる場合もございます。

 

以上、今回その他の物的損害として1番から5番まで解説いたしました。これらはやはり「その他」と言われるだけございまして、なかなかハードルが高いものとなります。ただ事故に遭われた方で、特に弁護士をつけて請求されるという方については、こういったところについても事情をしっかり話して頂いて、できるだけ事故前の状況に戻れるようにしっかりと活動・請求できたらなと思っております。

 

以上、これまで交通事故による物の損害のシリーズとして解説してきまして、今回は「その他の損害」について解説いたしました。これでこのシリーズについては一通りお話しできたかなと思いますので、他に疑問などございましたら、宜しければ弁護士のほうにご相談いただければと思います。

 

関連記事

著者紹介

弁護士 田代 隼一郎 

おくだ総合法律事務所 所属 

平成24年 弁護士登録  福岡県弁護士会所属 

九州大学法学部卒  大阪大学大学院高等司法研究科修了 

 弁護士 田代 隼一郎のプロフィール詳細