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レッカー費用と代車料 交通事故による物的損害 ② 

こんにちは弁護士の田代です。

今回の動画では新たに始めております、シリーズ「交通事故による物的損害」第2回目・レッカー費用と代車料についてご説明致します。

画面に出てますように代車料が赤字で強調されています。これはレッカー費用はそれほど多くの問題はなく、それに比べて代車料は交通事故の被害者にとってトラブルになることが多いという点で今回は代車料を中心に解説したいと思っております。

おさらいをしますと、交通事故による物の損害については次のように分類することができます。

まず事故によって車が破損した、この車の「修理費用」、これが損害のメインですね、主な損害です。

さらに「レッカー費用」。事故で動かなくなった時に車を搬送する、修理工場まで持って行くとかそういうのにかかる費用。

それと「代車費用」。車を工場で修理してる間、工場などから新たに車を代車として借りる。これも無料ではないことが多いため代車費用が生じます。

このような損害が主な交通事故による物の損害となりまして、ただそれ以外にも物の損害はございます。そしてこのシリーズでは上から順番に解説しておりまして、前回は1番の修理費用、これについて解説しました。

 

レッカー費用

そこで今回の動画では、2番の「レッカー費用」を解説します。ただ レッカー費用についてはそれほどトラブルになることは多くはございません。おそらくですけれども、レッカー費用は修理費用とか代車費用ほど金額も多くならないんですよね。大体1・2万円とか家庭用であればその程度が多いので、そのためそれほどトラブルにならないのかなと思います。

 

一応注意点としましては、自分で走って工場とかに行けるのであれば自走する。レッカーを使う必要がない時、この時にはレッカー費用は損害として認められない、そういうリスクがございますので、自走できるなら自走する。ただ一見モーターは動いてタイヤは回ると言っても、それでも例えばバンパーが外れかけてる車を公道で走るというのは危ない、あるいは法令上許されない、とそういうケースもありますので、一応自走できるかどうかそこは慎重に判断頂いたらいいと思います。例えば事故現場にまず警察に連絡して警察が臨場すると思いますのでご相談いただいてもいいんじゃないかなと思います。 

 

次の注意点としましては、レッカーを使うとなっても、基本的には1回だけしかレッカー代はみられません。そのため例えば事故現場から修理工場にレッカーを使って車を動かす。あるいは車屋さんに動かす。この時のレッカー代というのが賠償の基本です。搬送先のディーラーからさらにどこかの専門の工場に動かすとか、警察署に動かすとかそういったことでレッカーを使うケースがございまして、そういうのは”二次レッカーを使う”といいます。1回目にまず使ったレッカーが「一次レッカー」で、2度目に使うレッカーが「二次レッカー」。この二次レッカーについては、それが必要だ・不可欠だった、といった事情が必要になってくることがございますので、基本的には1回だけという風にお気を付けください。

 

また、修理工場にということですが、これは最寄りの修理工場ですね。なので日本全国に支店があるような大きなところでございましたら、事故現場から近い所に持っていくと、こういった点はご注意下さい。

 

レッカー費用としてはこの程度でして、次に今回の動画では「代車費用」について解説いたします。先ほど述べましたように代車費用はトラブルが多いです。要注意ということで、よかったらしっかりとお聞きください 

 

代車料の注意点

1 裁判上の厳しい条件

⑴ 代車の利用 → 仮定的代車料は認められない  

 

第一に代車の利用ということで、代車を実際に有料で使わなければいけません。これは修理費と違う点がございまして、修理費は事故で車が破損したと、その時には修理を実際にしてもしなくても、メーカーから見積もりをもらったところで、車が破損したそれ自体が損害ということで基本的には見積もりを基準とした賠償が得られます。その例外もございますが、それは前回の動画を良かったらご覧下さい。

それに対して代車については、実際に代車を使用してその分お金を実際に払うか、請求が来てる、払わないといけない立場になっている、いずれかの状態じゃなければ代車料は賠償としては認められない。これは仮定的な代車料は認められないと、そういう風に表現されます。ご注意ください。

 

 ⑵ 代車のグレード → 高級外車は基本的に認められない

 

 

次に代車を利用するにしてもそのグレード、どんな車を利用するのかというのも問われます。つまり高級車を代車利用すると代車料も高額になりますが、例えば高級車、外車ですね。こういったものは基本的には代車としては認められません。まず元々破損した車と同等のグレードというのはまず条件のひとつですね。同等以下のグレード。じゃあ破損した車が例えばベンツだったらベンツの代車が認められるのかと言うと、そうでもありません。ベンツが壊れたとしても、普段車として利用するにはベンツじゃなくてもいいじゃないかと、そういう判断がされてしまいますので、これが認められるケースとしては、例えば仕事上そういったグレードの高い車に乗って仕事することが不可欠だったとか、そういうかなり特殊なケースに限られて、しかもその立証が必要になってくるという問題がございますので、高級外車は基本的に認められないから使わない、というスタンスのほうがトラブルも少ないと思います。しかも代車料も高くなるので、その分を認められるか認められないかという不安定な立場になることはお勧めしません。

 

 ⑶ 代車の必要性 → 営業上又は日常生活上の不可欠性

 

次に裁判上の厳しい条件の三つ目は、 代車を使うにはその”相当な必要性”という使う事情が必要となります。これは先ほどの高級車と違って代車全般についてですね。事故で自分の車が壊れました。普段買い物に使ってて修理してる間が不便です、とこれだけでは代車料って実は相手に賠償で求めることはできません。不便というのを越えて、営業上又は日常生活上車を使うことが不可欠なんだ、とこういった点が裁判になったら求められると。これは通常裁判にならない、相手の保険会社と話をする間ではそこまでは言われないことが多いです。ところが揉めてしまって裁判をしましょうとなると、この点が認められなくなるというハードルが出てくる。この点代車料の怖いところとして、トラブルの原因としてご理解ください。

 

⑷ 代車の必要期間 → 速やかな修理や買換に必要な期間

 

 

さらに4番目として、代車が不可欠であったとしても必要な期間というのが制限されてしまいます。これは事故を起こしてからすぐに修理や買い替えですね、そういったものを検討をすると、そういう前提でその修理や買い替えのために必要な期間という形で制限されてしまいます。修理にしても買い替えにしても、相手の保険会社と特に過失の割合などで、どちらがどれだけ悪いのか、どれだけ賠償してもらえるのかが分からない中でこの辺りを決める、すぐに修理する、すぐに買い替える、なかなか現実的ではございません。そのためこの代車の必要な期間についてもよくトラブルになります。しかし裁判の基準としてはこのような必要な範囲というのに限定されてしまいます。ご注意ください。

 

一つのメルクマールとしまして、修理が可能な時にはですね、この代車として利用できる期間としては大体1~2週間程度というのが目安になります。また、もう修理ができない、もう車が大破しちゃってそもそも修理ができないとか、あるいは修理費よりも時価額の方が安くてもう買い替えた方が経済的だ、とそういう時は、買い替えが必要な時として、買い替えの検討期間は少し修理期間よりも長く見られますが、それでも1か月程度です。このような修理の時に2週間が近づいたりとか、買い替えの時に1か月が近づいたりすると、弁護士の感覚としてはいてもたってもいられません。いつ代車料について相手の保険会社からもうここから先は払わんと、場合によっては後出しで言われることもございます。そのため弁護士としてはもう一刻も早い解決をしないといけないという、そういう焦りを感じるっていうくらいトラブルになりやすいと、そしてトラブルになった時には、被害者側にリスクが大きいというこの点は、よくよくご注意ください。

 

2 保険会社(担当者)によって謎の条件(無過失限定ルール)

さらにもう一つ代車料の問題の注意点として、保険会社とか担当者によるんですけれども、独自の条件を当然のように言ってくる、これが代車にあるんですよね。これは画面に書いてますように、無過失限定ルールという風に私は今表現してますが、加害者側が100%悪いケース、例えば追突だとかですよね。止まってる車に追突しましたとか、あるいはセンターオーバーしましたとか、それで対向車とぶつかったとか、そういう加害者側が100%悪いケースって限られてるんですが、そうじゃなければ代車料払いませんと、賠償はしませんと、しなくていいんですと、そういう風な話をされることがございます。これは全くのデタラメです。しかも質が悪いことに担当者によってはそれがデタラメだっていうことを知らない担当者もいる。なのでそこはちょっと上席と話させてくださいということでようやく解決したりするとかそういうこともございます。最近は少なくとも弁護士と交渉する中ではそういうことを言われることはほとんどないというぐらい減ってきてますが、それでも20件に1件ぐらいかもうちょっとあるかもしれませんが、それぐらいのケースでそういう風に勘違いしてる保険会社とか、あるいは分かってて言ってる人もいるかもしれませんが、そういう事もございますので、そういう謎の条件、独自の慣行ですね、決まり事と言うかそういうのが言われることはございますのでご注意ください。

 

以上ですね、このような点から代車料というのは非常に怖いトラブルになることが多いということで、特に注意して解説しました。

今回の動画では交通事故による物の損害で、2番のレッカー費用について軽く話をしまして、3番目の代車費用について詳しく解説しました。またこのシリーズ4番目の「その他」、これも話すことはそれなりにございますので、また次の動画も今後発表致しますのでよかったらご覧ください。失礼します。

 

著者紹介

弁護士 田代 隼一郎 

おくだ総合法律事務所 所属 

平成24年 弁護士登録  福岡県弁護士会所属 

九州大学法学部卒  大阪大学大学院高等司法研究科修了 

 弁護士 田代 隼一郎のプロフィール詳細