損害賠償額は決まっているのか?

ご相談の際、よく聞かれるご質問として、「交通事故の賠償額っていうのは、治療期間や後遺症の程度によってきまってるんですよね?」というものがあります。答えは、「半分イエス、半分ノー」。どういうことでしょうか?

慰謝料の金額には基準があるが、「幅のある」基準である!

「損害賠償の計算方法」でのご説明の中で、たとえば、「傷害慰謝料」について、「入通院期間等によって一定の基準」があるとご説明しました。 
しかし、この「一定の基準」には、以下のものがあります。

(1)自賠責保険(強制保険)の基準

自賠責保険とは、強制加入の保険で、被害者に対して最低限の賠償を保障するものです。したがって「最低限」の額となっています。

(2)任意保険の基準

任意保険は、自賠責保険でカバーできない部分を賠償するものです。この「任意保険基準」は公表されているわけではありません。ただ、保険会社との交渉で提示される金額(しばしば「当社基準」等といった表現で提示されます)は、後記(3)の「裁判基準」よりも低く、そのため、「自賠責基準」よりも高く、「裁判基準」よりも低い「任意保険基準」があると言われています。

(3)裁判の基準

裁判基準は、裁判となった場合に、判決で認められる基準です。一般に(1)、(2)より高額といわれています。ただ、特に法律によって決まっているわけではなく、過去の判例の集積で「だいたいこのくらい」とされているものです。弁護士が被害者の代理人として相手方(保険会社)と交渉する際は、この基準を念頭に交渉します。

3つの慰謝料の基準

以上のように、傷害慰謝料ひとつをとっても、一定の入通院期間の場合の基準として、上記(1)、(2)、(3)の3つの基準があり、通常、その額は、(1)<(2)<(3)となっています。同じような違いは、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料でも見られます。

休業損害、逸失利益については、基礎収入、期間をどう考えるかで大きく違う!

たとえば、次のような事例です。
被害者は、入社まもない新入社員。痛ましいことに、交通事故でお亡くなりになりました。

相手方からの逸失利益の提示は、
300万円(事故前年収)×17.774(就労可能年数45年の係数)×0.70(生活費控除率)
=3732万5400円。

この計算のどこが不当かおわかりになりますか? (係数や生活費控除の点は除く)
答えは、事故前年収の300万円を基礎としている点。

新入社員の彼は、現時点では給料が安くても、その後、昇給する可能性が大きいはずです。
そのため、死亡前の現実年収ではなく、全年齢平均の年収で計算すべきなのです。

かりに、大卒男子全年齢平均年収で計算すると、
633万円(大卒男子全年齢平均年収)×17.774(就労可能年数45年の係数)×0.70(生活費控除率)
=7875万6594円
実に4000万円以上もの差です。

過失相殺率によっても変わってくる!

また、当然、過失相殺率をどのように考えるかでも、違いが出てきます。

示談は契約である

そして、根本的には、交通事故の示談は「契約である」ということが、「賠償額は決まっていない」ということの原因です。
つまり、示談は、法的にいえば「契約」であり、その内容は、当事者の合意によって決まるものです。
たとえば、土地の売買契約であれば、その値段は、契約当事者の合意によって決まります。相場が3000万円の土地であっても、売主が「1000万円でよい」といえば、1000万円での売買契約が成立するのです。

これと同じように、交通事故の示談においても、裁判をすれば3000万円以上賠償される事案でも、被害者が「1000万円でよい」といえば、1000万円での示談契約が成立してしまいます。
大切な土地を売るときに、相場も知らずに契約書にサインをする人はいません。
交通事故の示談でも、必ず一度は、専門の弁護士に相談して、賠償額の「相場」を知るべきなのです。

 

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