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交通事故における子どもの過失相殺

Q. 子ども(5歳)が自転車で2人乗りをしていてクルマと衝突する事故にあいました。こうした幼児でも「過失相殺」されるのでしょうか?


A. 過失相殺は、事故の損害を当事者に公平に分担させるためのものなので、被害者に「事理を弁識するに足りる知能」つまり、ものごとの道理を判断できる知能があれば過失相殺をしてよいとされています。
 一般的には、小学校低学年でこうした知能があるとされますが、裁判では子どもの年齢のほか教育状況や事故の状況などを考慮して判断され、5歳程度でもこうした知能があると判断される場合があり得ます。
 子どもが被害者の場合は判断が複雑になりやすいので、弁護士に相談するのが得策です。

 

1 「過失相殺」
 交通事故では当事者の一方だけが悪いということは少なく、お互いに「過失」がある場合に起きることが多いといえます。過失相殺とは、事故の被害者側にも「過失」がある場合に事故の当事者の「過失」の割合分の金額を損害賠償金額から減額することをいいます。

 

2 未成年者の能力
(1) 損害賠償責任を負う場合の能力
 交通事故で損害賠償責任を負うためには、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」が必要とされます。この「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは、自分の行為が何らかの法律上の責任を負うことになると理解する知能をいいます。判例では、12歳前後でこうした知能があると判断されています。


(2) 過失相殺される場合の能力
 過失相殺は、事故の損害を当事者に公平に分担させるためのものなので、「過失相殺」の「過失」は、被害者の不注意といったものでよい、とされています。
 過失相殺される場合の知能は、判例では「事理を弁識するに足りる知能」でよい、とされています。つまり、「自己の行為の責任」を理解する知能よりも低く、ものごとの道理を判断できる知能があればよい、ということです。
 一般的には、小学校低学年でこうした知能があるとされます。しかし裁判では、事故の状況や子どもの教育状況などを考慮して判断され、5歳程度でもこうした知能があると判断される場合があり得ます。


3 被害者が子どもの場合の過失相殺
 被害者が子どもの場合の過失相殺では、子どもに「事理を弁識するに足りる知能」がないときでも、親などが監督をきちんとしていなかったことが「被害者側の過失」として考慮される場合があります。
 被害者が子どもの場合、損害額の算定も複雑になりますので、損害賠償額について当事者で意見が異なることが多いと考えられます。
 このように、子どもが被害者の場合、過失割合などの判断が複雑になりやすいといえます。お子様が万一交通事故にあわれた場合には、専門家に相談することをお勧めします。

 


*ご参照 : 過失割合