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【動画で解説】ながら運転に対する規制

弁護士の田代隼一郎が、ながら運転に対する規制「ながら運転」の厳罰化に備えてと題して動画で分かりやすくご説明させていただきました。ぜひ、ご覧くださいませ。

こんにちは。弁護士の田代です。

今回の動画では、「ながら運転に対する法規制」についてご説明します。

あまり知られてないかと思いますが、先日、道路交通法の改正法が公布されました。

その内容は、「ながら運転」に対しての厳罰化を含むものです。この改正案は、今年(令和元年)中に施行される予定になっていますので、厳罰化はそう遠くはありません。

ところが、「ながら運転」という言葉は、例えばスマートフォンや携帯電話をいじりながらとか、あるいは音楽を聴きながらとか、そういうイメージはなんとなくあるかもしれませんが、必ずしも「何が法律上規制されてるのか」、これはそれほど明確に広まっていないと思います。

そのため、今回の動画では、「ながら運転」とは何か、どんなものが法律上どんな風に規制されているのか、こういった点についてご説明したいと思います。

 

ながら運転に対する国の規制

まず、「ながら運転」に対しての国の規制からご説明します。

国の規制というのは、つまり法律による規制です。道路交通法上、画面(下記)に表示されてるような規制がされています。

まず、ざっと読みますと、

 

①自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、②当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(③その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。)を④通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた⑤画像表示用装置に表示された画像⑥注視しないこと。

非常にわかりにくい言葉ですので、これは非常に解説のしがいがあるかなと思います。

いくつか個別に要素を取り出して解説します。

 

① 自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、

まず、「自転車または原動機付自転車を運転する場合においては」と、こういう場面に限定されています。

これはつまり、道路交通法上の規制は、”自転車”の運転者は対象外、と。携帯電話の使用とかそういったものについての自転車を運転しながらの使用は、法律上は制限されていない、と、こういうことがまず読み取れます。

 

② 当該自動車等が停止しているときを除き

次の要素として、「当該自動車等が停止しているときを除く」

と。この②ですね。こういった限定もされています。

つまり、自動車が停止している時には、いわゆる「ながら運転」(スマートフォンの使用あるいはカーナビの入力等)も許される、ということが分かります。

カーナビについては、例えば停止してる時にテレビが表示されたりとか入力が可能になったりとかそういったシステムもありますので、これはイメージしやすいかと思います。

 

③ その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。

次の例外ですね。次は③。

「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る」という風に、かっこ書きでの限定がされています。これは、ときどき質問されるのですが、「スマートフォンは手で持たなければ大丈夫なんでしょうか?」と。つまり、 Bluetooth 等のワイヤレスイヤホンに接続して運転すること、一応これは法律上許されております。

あと、タクシーもイメージしやすいと思います。タクシーの無線で話しながら運転されるタクシー運転手は結構いらっしゃいますが、これが許されているのもこういった法律上の限定に基づくものです。

 

④ 通話のために使用し・・・

次に④ですね。

「通話のために使用し」これはなにかと言うと、「無線通話装置」つまりスマートフォンなどを「通話のために使用」することが制限されているので、使用しないということが義務付けられています。

この「通話のために使用」。これがなかなか厄介な言葉で、一つは単純に通話をして話しながら運転をすることが許されないと、これは非常にわかりやすいです。けれども、このほか、例えば、通話をしようとして番号を入力する、この時点でもうダメなんです。

 

通話という目的のために使用すること、それが禁止されているので、番号を入力してる時点でもう許されない。また、留守録を聞くこと、これも、通話と言うと自分が話をするというイメージがありますけれども、留守録を聞くとかあるいは電話を使って天気予報を聞くとか、こういったことも通話のための使用という文言に引っかかりますので、道路交通法に違反することになります。

 

⑤ 画像表示用装置に表示された画像を

次の規制ですが、⑤について。

「画像表示用装置に表示された画像」を注視しないこと、という規制もあるんですが、「画像表示用装置」、これは電話とはちょっとイメージが違いますよね。

わかりやすい例が、カーナビのテレビの画面を見ながら運転するとか、これは許されないというのはわかると思います。

 

ただ、「画像表示用装置」というと、必ずしも映像に限定されてもいない、ということがあります。例えば、スマートフォン、これも画像が表示されるので画像表示用装置。それに表示された画像を見る、例えば、LINEとか E-mail とかそういったものをスマートフォンで使用するというのもこの言葉に引っ掛かり、道路交通法違反となります。

 

⑥ 注視しないこと

続いて、文言として「注視しないこと」という限定があります。ここで時々聞かれるのが「一瞥するだけなら、ちらっと見るだけなら大丈夫なんでしょうか」と。これは、結論としては、「注視」という言葉のとおり、チラッと見るというのは許されています。分かりやすい例が、カーナビですね。カーナビで地図を見るというのは、これも画像表示用装置に表示された画像を見るということですが、チラッとみるという事で許されてるという事になります。

 

ただし、同じくカーナビにテレビが表示されると、こういったものについては、テレビ自体がチラッと見るという性質のものではないというふうに解釈されます。そのため、例えば、テレビを見た、視線を送ったのが1秒だけだった、というようなことを警察と争っても、それは基本的には言い逃れにならないと、今のところそういった運用がなされています。

 

また、他方で、カーナビについてもジーッと何秒間も見るというのは、この道路交通法違反になる可能性がありますので、そういった時は一度道路で車を道幅に寄せてから停止した上でカーナビの確認をされると良いかなと思います。

 

違反に対する罰則

このような「ながら運転」に対する国の規制について、次に、この違反をした場合にどのような罰則があるのかについて、ご説明します。

まず、現状の罰則については、原則として「5万円以下の罰金」が科されます。次に、この違反によって交通の危険を生じさせた場合、つまり「ながら運転」で他に事故を起こしそうになったりした場合には、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」と、少し重い罰則が科されています。

 

ここで最初の話に戻りますと、この罰則がまだ軽い、と。最近、「ながら運転」に基づく重い事故も発生していますので、それを受けて、この罰則が厳罰化されることになりました。

 

この「5万円以下の罰金」については、「6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金」となり、また、交通の危険を生じさせたものについては更に重く、「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」というように、かなり重い罰則が今後科されるようになりましたので、くれぐれもご注意ください。

6 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項

ちょっと話が前後しますが、この「ながら運転」でも、自転車でのスマートフォンの使用って本当に許されるのか、という所に話が戻ると、必ずしもこの規制はここに表示されている規制に限らない点にご注意ください。

引き続き解説を続けますと、この道路交通法の条文ですが、続きがありまして、

 

前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項

と、つまり都道府県公安委員会が別に定める事項についてそれの違反も許しませんよと、そういう記載になっています。

 

ながら運転に対する都道府県の規制

そこで、ここから話の後半になりますが、都道府県公安委員会が別に「ながら運転」に対する規制をしていますので、ここにもご注意ください。

 

例えば福岡県。福岡県では「福岡県道路交通法施行細則」によってこの画面のような規制がされています。関係のないところを省略しますと、例えば、

 

自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持して通話し、若しくは操作し、又は画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。

 

という風にされています。これはまさしく携帯電話を手で保持しての通話がダメだと、あと操作もダメだと、あるいは画像表示用装置、カーナビとかスマホの画面とかを注視してはいけないという、先ほどと同じような規制ですよね。これを自転車の運転についてもいけません、という風に規制されております。

また、「ながら運転」の中で時々質問されるイヤホンの使用などですが、これについても道路交通法上の規制はありませんが、都道府県によって規制がされていることが多い点はご注意ください。

 

福岡では⑻ですね。

⑻ 大きな音量で、カーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用して音楽を聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえない ような状態で車両を運転しないこと。

という規制があります。

つまり自動車に限らず原動機付自転車も、あるいは自転車も全て車両になりますので、これらの運転の時のイヤホンの使用やあるいは音楽やラジオなどを聞くことについて規制がされています。

 

ただ一点、非常に大事なところですが、「大きな音量」というような条件がありますので、特にイヤホンを使って音楽を聴くにしても、それほど大きな音量じゃない、つまり他のクラクションなどが聞こえないような音量じゃなければ許されている、と。これは福岡の話ですが、この点注意してください。そのため、よくイヤホンをつけたまま自転車に乗ってる人がいますが、これも直ちに違反とはいえません。

 

ながら運転によるその他の法的リスク

とはいえ、この「ながら運転」による法的リスクというものは単に規制に反するか反しないか、それだけではありませんのでご注意ください。

 

例えば、民法上の不法行為、「ながら運転中」に誰かにぶつかって人を怪我をさせたとか、あるいは人の物を壊したとか、そういった場合の責任。あるいは、道路交通法上の安全運転義務違反。あるいは、刑事上の問題もありまして、過失運転致死傷という罪に問われることもあります。

 

それから、最後は保険上の問題で、自分の怪我などについて自分のための保険。これは「重過失」というつまり過失が大きい時には保険が適用されない、という条項が通常定められています。

 

「ながら運転」がこの重過失というように認められる場合や、「ながら運転」以外にもいろんな(前方不注視とか信号無視とか)要素が重なれば重過失と認定される可能性も十分にありますので、そういった時には保険が使えなくなるといったリスクもありますので、くれぐれもご用心ください。

 

何かこういったリスクに直面されている方、あるいはそうでなくても単純に気になる点がある方など、ご質問がございましたらぜひ弁護士にご相談ください 。

 

最終更新日:2019年7月31日

著者紹介

弁護士 田代 隼一郎 

おくだ総合法律事務所 所属 

平成24年 弁護士登録  福岡県弁護士会所属 

九州大学法学部卒  大阪大学大学院高等司法研究科修了