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2度泣かないための 通院治療の注意点~知っておきたい保険会社の考え

こんにちは弁護士の田代です。 

今回の動画は、主に交通事故の被害者の方向けの動画です。『2度泣かないための通院治療の注意点』について解説いたします。 

交通事故の被害者の方、事故で1度辛い思いをして、それで通院されるのですが、さらに、思うように通院をさせてもらえずに2度泣かされる。そういったことをよく目にします。 

 

私の個人的な感覚では、最近わりと保険会社の対応がシビアになってきてるような感覚を持つこともありますので、今回の動画ではそういったことにならないように、「知っておきたい保険会社の考え」というテーマで、保険会社の視点をあえて取ってみることで、そういった知識を皆様にご紹介いたします。

 

今回の通院治療の注意点としては主に3つです。

1つが「通院先の注意点」。次に「通院期間の注意点」。最後に「通院頻度の注意点」。この3つのテーマから解説いたします。

 

通院先の注意点

まず通院先の注意点です。

1 病院の選び方

まず最初に通院するのは病院だと思います。病院というのは本当は不正確で、クリニックだとか医院だとか、そういった規模が多いと思うんですが、いずれにしても事故が起こって、場合によっては救急車でどこか少し大きな病院に搬送されて、その後に近くの病院とかに通院される。あるいは救急車での搬送がなかったら、最初から自分の通いやすいお近くの病院とかに通院されることが多いと思います。

・ 通院しやすさは大切

そういった時の病院の選び方ですが、まず通院のしやすさですね。近くの病院ですね。あるいは勤務先の近くなどでも結構ですが、距離というのはとても大切です。無理に遠い病院に通うと、後になって保険会社から交通費を出さないと言われることもあります。なので2度泣かないための観点からも、近くの通いやすい病院を選ぶことは大切です。

 

もう一つ。通いやすさという意味では、開いている時間ですよね。これについても出来るだけ無理なく通える、仕事終わりでも開いてる場所とか、休日でも開いてるところ。こういうところを探してみると良いのではないでしょうか。

 

・ 個性的な病院は避ける

もう1点。個性的な病院は避けるという点ですね。病院はそこまで変わったところとか大きな違いはないと思いますが、時々あるのが個性的なところ。例えば、骨折をしてない患者は3ヶ月しか見ない。3ヶ月経ったらどうなるかと言うと、「いやいや骨折もしてないのに3ヶ月以上の治療なんて必要ないんだ」とおっしゃる先生が福岡にもいます。

あと逆に、交通事故の患者さん大歓迎ですね。「どんどん来てうちで治療を受けてください。提携先の整骨院もございます」。こういうところもございます。

 

今の話はどこが問題なのかと言うと、そういうところは保険会社から目をつけられてるんですね。なのでそういったところが書いた後遺症の診断書では保険会社から後遺症は認められにくかったり、あるいは保険会社から、「早く治療を終えてください」という話が来たりとか。そういうこともございます。

 

あともう一つ。ここは難しいんですが、お医者さんと話していて、非常に押しが強かったりとかすると、時々ですが保険会社に言っていることと、患者さんに言ってることが違うことがあるんですよね。患者さんには「いやいやまだまだ必要だ。どんどん来い。治療が必要だ」と言っていて、一方で保険会社に対しては「いやもうそろそろ終わりです」というふうな話をされている。

さらに極端なのが、保険会社からの支払いはここで終わりだよ。治療が必要だというから、健康保険で通いますとなった時に、「いやいや健康保険だったらもう診ません。」(健康保険は)単価が安いんですよ。そういったことで治療の単価によって態度が変わるところとか、そういうところも稀にございます。こういう所は本当に稀ですが、そういった意味で個性的な病院を避けるという点を考えてください。

 

2 整骨院の注意点

・ 医師の指示がなければ危険

もう一点、整骨院の注意点です。整骨院は、患者さんあるいは交通事故の被害者の方は病院と同じように考えて、普通に通院されてるということが多いんですが、整骨院は結構危険なところがございます。というのも、整骨院自体がどうこうというよりも、保険会社の対応とか、あるいは裁判所の考え方が特殊で、そもそも整骨院の先生というのは、患者さんを診たりすることはできない、そういう能力もない。それが裁判所の考え方です。

 

そのため、お医者さんから「整骨院に通院してください。 例えば月に1・2回は私が診て、良くなってるかどうか確認して、それ以外のリハビリは整骨院でやってください。」そういう話であれば整骨院の治療は認められるんですけど、そうじゃない時に、お医者さんに何も言わずに行っているというときは、実はこれは裁判になったら負けるリスクが非常に高いんです。そういった意味で、医者の指示がなければ整骨院に行くこと自体がリスクである、ということを頭においてください。

 

・ 施術日・施術箇所に注意する

もう一点、整骨院で治療を受ける日(施術日)とか、治療を受ける場所について気をつけてください。例えば治療を受ける日、病院でリハビリの治療を受けた同じ日に整骨院に行ったら、これは二重の治療で、お医者さんでリハビリを受けてるんだから整骨院は必要はない、というふうに判断されます。これもすぐにそういった話は来ずに、治療の内容が相手の保険会社にわかるのは少なくとも一か月以上先です。なので後から「この整骨院の治療費は認めません」と言われたりするリスクがございますので、同じ日に行くというのはできるだけ避けてください。

 

もう一つが場所。これもお医者さんの診断書がまず出ます。頚椎捻挫とか腰椎捻挫とか首と腰というふうに出て、では整骨院でどこの治療を受けてるのか。足の太腿も治療を受けていました、肩も治療を受けていましたとなると、この部分は治療費は払いません、というふうになるリスクがあります。これも治療を始めてから少なくとも一か月先の話になりますので、治療の場所についても、お医者さんの診断が出てる場所を治療してもらう。それ以外のところは自費になる可能性があるという点に気をつけてください。

 

・ 診断や治療方針を鵜呑みにしない

最後に、診断や治療方針を鵜呑みにしない。これは先ほどの通り、整骨院の先生には患者さんを診る権限はない、これが裁判所の考え方です。そのため整骨院の先生が「まだまだ治療が必要です。まだ通ってください」と言われたとしても、裁判でもう治療の必要はないと相手から言われた時に、いや「整骨院の先生がこう言っていた。カルテにこう書いてある」と言っても、有効な材料にはしてもらえない。そのため定期的に整骨院に行きながらも、病院にも通院する必要がございます。病院に通院して、まだ治療は必要だ継続だという診断を受けておくということは必ずしてください。病院の先生のほうで「もうおしまいだ」という話が出たら、それから先はもう整骨院にも通わない。通ってもいいけれど、自費になる、自分の負担になるという覚悟で通って下さい。

 

通院期間の注意点

次のテーマは、通院期間の注意点です。

通院期間について。保険会社は、通院したいという場合にいつまでもみてくれる(治療費を出してくれる)わけではありません。どこかで「治療はもうおしまいだ」という話が出ます。

 

1 打ち切り

これには二つのパターンがあります。基本的には1番の『打ち切り』です。

例えば、この動画を11月に見ているとします。 「12月末でもう治療は終了してください。そこから先はみません。治療費は払いません」という話が来る。これが打ち切りです。 この打ち切りの話があった時にはもう1月以降は出ない、保険会社からは払われないという危険が非常に高いので、お医者さんと相談する、あるいは保険会社とよく話し合う必要がございます。

それでも無理に通っていた時にどうなるのか、そういった点ですね。

 

2 遡って否認

あるいは時々あるパターンで、『遡って否認』される。

11月に保険会社と話をするとしたら、「9月末までの分しか認めません」。10月分の治療費は保険会社が払っているのですが、後になって「10月分から先の分は認めません」というふうな話が出ることも稀にあります。

 

これがどうなるのかと言うと、10月以降の治療費は自己負担になる。治療が終わった後に、保険会社から普通は慰謝料などの支払いがあるんですよね。その中から10月分以降の治療費が差し引かれてしまう、という形になるという意味で自己負担になる。こういった危険もございます。

 

いきなり遡って否認されることというのはほとんどないのですが、打ち切りの話をずっと無視していると、2月に話し合うとして「当然12月末までしか認めません」という話が出るとか、あるいは12月末じゃなくて、もともとこういう話があって無視をしていたとすると、後になって「9月末までしか認めません」と、保険会社の言う期間が変わってくるというリスクもあります。なのでこういう話があったら是非注意して、よければ専門家にご相談ください。

 

通院期間の目安

通院期間の目安ですね。大体のところを知っておいたらいいかなと思いますので解説します。

大きくいうと、骨折のケースと、骨折がないむち打ちや捻挫のケースです。

 

1 骨折

これは私の経験上なんですが、骨折の場合の治療期間としては4ヶ月から1年ぐらい、ということが多いかなと思います。治療方針によっても変わってくるのですが、骨折をして折れた所にボルトを入れるとかそういう時には、比較的治療期間は長くなる、1年とかですね。半年以上経ったぐらいで入れていたボルトを抜く。その後経過を見て、大丈夫だとなっておしまいというパターン。これは骨折の場合にあるのですが、これが一番長い。そういった時は1年ぐらい認められます。

ただ骨折でも、安静に様子を見て、骨がちょっとずつ癒合していくのを確認していくというケースだと、比較的早い。この時には治療期間は4ヵ月ぐらいからかなという感覚を持っております。

 

2 むち打ち・捻挫

骨折よりもよく目にするのが、むち打ちとか捻挫のケースです。こういうケースだと治療期間はもっと早く、1ヶ月から最大で6ヶ月。6ヶ月も認めないことがほとんどです。こういう目安になります。

考慮要素

この幅についてどう考えるのかと言うと、『考慮要素』と書いている点が考慮されます。

・ 衝撃の大きさ

 

一つが衝撃の大きさですね。大きな事故だったのか軽い事故だったのか。骨折もしてないのにどうやってわかるのかという話ですけれども、車の修理費、あと車が壊れている時の写真ですね。そういうので分かります。本当はわからないんですけれど、そういうもので推測される。例えば修理費でいうと、100万円を超えていたらそれなりに大きな事故だと考えられやすい。他方で20万円以下ぐらいだと軽い、人体への影響はほとんどないというふうに捉えられやすいです。そういった時には治療期間は1か月とか短く言われやすい。

 

・ 医師の意見

 

もう一点、お医者さんの意見ですね。お医者さんがまだまだ治療が必要だと言ってる中で打ち切りというのはされにくい。どちらかというと、お医者さんがもう必要ないと言っている、とか否定的な意見を引き出して、それをもとに打ち切りと言ってくる。この点、先程の個性的なお医者さんを避けるとか、あるいは整骨院は判断材料にならないことに関係しますのでご注意下さい。

 

・ 治療費の支払額

 

もう一つですね、治療費の支払額っていうのも大事なんですよね。これは保険会社が払っているので患者さんはよくわからない(窓口負担がないからですね)。ただこの治療費は、すごく分かりやすく言うと、自賠責保険っていう強制保険の枠内であれば、相手の保険会社は懐が痛まないんですよね。これは120万円までしか払われません。慰謝料とかも込み込みで120万円なので、治療費を見ていって、このままだと120万円を大きくオーバーするというふうに保険会社がそろばんを弾いて、その結果が出たら「もう治療はやめてください」というような連絡を慌てて入れるというケースもございます。治療はなかなかわからないので、目安としては、一つが通院の頻度ですよね。毎日通院してたら治療費は上がります。あと通院先。整骨院は治療費が高いイメージがあります。病院は違いはあっても割りと横並びかなと思います。そういった点で治療費を考える目安にして下さい。

 

・ 通院頻度

 

もう一つが通院頻度。治療費の話と関係する通院頻度。頻度が多ければ治療費も多い。あともう一点、通院頻度を一つの項目にあげている理由が、極端に少なかったり極端に多ければ、それだけで打ち切りの材料にされます。後で詳しく言いますが、例えば1ヶ月以上(通院日が)開いてしまうと、その瞬間「打ち切りだ」と、それが普通の運用です。なのでご注意ください。通院頻度も大事です。

 

・ 人の性格

 

最後に人の性格ですね。大きくはありませんがこれも考慮要素の一つにはなります。人の性格というと、一つは加害者が「もうこんなの認めん。俺はそんなの知らん。怪我なんかするはずなかろうもん」と保険会社の方に「もうそんなのみるな」というふうに強く言ってる。そういう時には保険会社もシビアな対応をします。お客様ですから。

 

もう一つ被害者自身。事故に遭っていることが非常に多かったり、あるいは事故ではないけど、高齢者の方とかで元々持病持ちだったりとか、元々整骨院などに通ったりされているとか、そういう方は事故と関係があるのかそうじゃないのか、元々のものなのかが分かりにくいということで、早く切られることもあります。

 

あともう一つが保険会社の担当者というのも残念ながらございます。こういう時には場合によっては担当を変えてもらうとかいうこともあるかもしれません。

 

 

一応こういう考慮要素。ただ主に注意するのは上の4つかと思います。人の性格というのは、ちょっとコントロールもしにくい話ですから、この上4つの点にご注意ください。

 

通院頻度の注意点

次に3つ目のテーマ、通院頻度です。

・ 何より、体調と医師の見解を尊重する

通院頻度の注意点としては、何より体調。ご自身の身体の怪我の状態と、

お医者さんの見解。それを尊重して通院を考えてください。これは通院頻度に限らず、通院期間もそうですし、通院先もそうですね。痛くないのに通うとかはまったくナンセンスなのでやめてください。

 

・ 最低限1か月に1回以上は通院する

通院頻度を賠償の観点から目安を解説しますと、最低限1か月に1回以上は通院する。これは先ほど話した通り、1か月以上開くと、その瞬間打ち切りがございます。それが普通の運用です。最近はそういったケースで、例えばコロナの濃厚接触者になって外出できなかったとか、そういう特殊なケースでは、陽性の証明、家族の陽性の証明と住民票とかを一緒に出して交渉したりすることはございますが、そういう特殊なケースじゃない限りは厳格なルールとして決められた運用をされますので是非ご注意ください。

・ できるだけ、週に2~3回は通院する

次2番目。できるだけ週に2~3回は通院する。 これは慰謝料の考え方なんですけれども、週に2~3回の通院というのが、慰謝料を適正に払ってもらうという考え方になります。慰謝料って人の気持ち、痛みとか苦しさの話なので、外からはわからないんですよね。なので残念ながら通院期間や通院頻度といったもので苦しさや痛みというものが推測されて、それの運用になっております。その時にどれぐらいの頻度なのかっていうと週2~3回ですね。それより頻度が少ないと、そんなにたいした痛みじゃないんじゃないかと、普通よりも慰謝料は下げられてしまう。

・ 2日に1回を超えるとお勧めできない

逆に頻度が多いとどうか。例えば2日に1回を超えるとどうかと言うと、そんなに通っているのはご自身の性格とか好みの問題だよね、ということで結局その分は慰謝料に反映されない。なので、適切な慰謝料を受けるには、週に2~3回ということになりますので、これは頭の片隅に入れておく。基本はご自身の体調と医師の見解を尊重して通院してください。

・ 毎日は危険

最後に、毎日通院するという方が時々いらっしゃいますがこれは危険です。毎日通院をすると、保険会社はこれは危険だとすぐに打ち切りをしてくることが多いです。これは今までの話で言うと、例えば治療費のリスクですよね。保険会社が、このままだと自賠責枠(120万円)を超えてしまって自己負担になる、と考えますし、また、人の性格というものも通院期間の目安でしたが、毎日通院をするというのはやはり身体になにか問題がある方ではないかとか、そういう形で見られますので、毎日通院するのはできれば止めてください。すぐ打ち切られるので、最終的に治療の観点から純粋に考えても、それよりは通院頻度を抑えて長く通ったほうがいいと思います。

以上が通院頻度の注意点です 

 

通院治療の注意点

今回の動画は、通院治療の注意点として、通院先・通院期間・通院頻度という3つのテーマについて解説いたしました。

不本意な打ち切りに遭ったらどうする?

これらの注意点を守っていたか、あるいはちょっとどこか無理が出たかですね。仕事しながらだとそう簡単にはいきません。最終的にどこかで打ち切りの話は必ず出ますので、そういった話が来た時にどうするか。そこで終わりだったらいいけど、これじゃ納得できないという時ですが、その時は健康保険を使って通われるというのをお勧めします。

 

打ち切り、というのは保険会社から言われます。そこで治療がおしまいというようなニュアンスに受け取られますけど、厳密にはそうじゃない。「保険会社はそこまでしか毎月支払っていくことはしません」という話で、自分で通院することはできるんですよ。ただ、その時自分で通院した分は保険会社からは払われないとなると、後々保険会社に請求していく。例えば裁判をするとかなんとかっていう可能性もありますし、その時にどういう結論になるかわからない。勝てば回収できますけれども、負けたら自己負担になる。その時の負担を減らすためには、健康保険を使って3割とかいう風に負担を減らして通院されるということをお勧めします。

じゃあ3割負担したから確実に回収できるかって言うと、リスクは非常にございます。裁判しないといけないと、その負担もございます。

打ち切りの話などが出たら、もうこの日でおしまいっていうその日を迎える前に、専門家にご相談ください。 

 

今回の動画では2度泣かないための通院治療の注意点について解説いたしました。

弁護士 田代 隼一郎 

おくだ総合法律事務所 所属 

平成24年 弁護士登録  福岡県弁護士会所属 

九州大学法学部卒  大阪大学大学院高等司法研究科修了 

 弁護士 田代 隼一郎のプロフィール詳細