物損と人身(人損)

今日は、交通事故の物損と人損ということについてお話ししたいと思います。

たとえば、自動車を運転していて追突された様な場合、自動車が壊れるとともに、運転していた方が怪我をします。

この場合、自動車の修理費用、レッカー費用、レンタカー費用など、自動車という「物」が壊れたことに関する損害のことを「物的損害」、略して「物損」といいます。

これに対して、運転手が怪我をしたことによる治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料などを「人的損害」、略して「人損」と呼びます。

交通事故の被害にあった場合、このような「物損」と「人損」の2種類の損害が生じ、これらについて、相手方の任意保険会社と賠償交渉をすることになるわけですが、通常、「物損」の賠償交渉が「人損」よりも先に始まります。それは、「人損」の方は、治療に時間がかかるため、その賠償額の交渉は治療終了後まで始められないのに対し、「物損」の方は、修理見積などが出されれば、損害額が比較的早く確定するためです。 

そして、弁護士の目から見た場合、物損の賠償交渉と人身の賠償交渉では、圧倒的に後者、つまり人損の交渉の方が、保険会社の提案額からの上積みが期待できる場合が多いのです。

これにはいくつか理由がありますが、最大の理由は「慰謝料」があるかどうかという点です。

つまり、人損では、通院期間と頻度に応じて、「慰謝料」が認められるのに対し、物損では「慰謝料」は原則として認められません。

したがって、物損の場合、どんなに大切な車が壊れても、賠償されるのは、「修理代」か、あるいは車の「時価額」に限定されます。

また、たとえば、一緒に乗っていたペットが死亡した場合も、法律上、ペットは「物」として扱われますから、原則として賠償されるのはペットの市場価格のみであり、可愛がっていた買い主の心の傷、精神的な損害に対する「慰謝料」は、認められないか、あるいは認められてもせいぜい数万円から20万円程度ということになります。 

私どもにも、交通事故の被害に遭われて、保険会社から提示された「物損」の賠償額が低すぎるといった御相談がよく寄せられます。

こうした御相談の場合、「物損」については、あまり上積みが望めず、むしろ、人損について、弁護士に依頼してしっかり交渉してもらうことにより、数十万円、場合によっては数百万円以上の賠償額の上積みを得られる見込みが高いといったケースが多いのです。 

したがって、逆に、物損について保険会社の提案額に不満を持たなかったような場合には、弁護士に相談に行くこともなく、その後の人損について不当に低い金額で示談してしまっているケースも多いのではないかと思われます。

ですから、交通事故に遭われた場合には、一度は弁護士に相談に行かれることをおすすめします。